精神科についてこころの病気について
統合失調症
統合失調症とは
統合失調症は、こころや考えがまとまりづらくなってしまう病気です。そのため気分や行動、人間関係などに影響が出てきます。統合失調症には、健康なときにはなかった状態が表れる陽性症状と、健康なときにあったものが失われる陰性症状があります。
陽性症状の典型は、幻覚と妄想です。幻覚の中でも、周りの人には聞こえない声が聞こえる幻聴が多くみられます。陰性症状は、意欲の低下、感情表現が少なくなるなどがあります。
周囲の人にもわかる統合失調症のサイン
統合失調症に多い幻覚や妄想の症状は、本人には現実味があってそれが病的な症状だとは気づきにくいものです。周りの人が気づくことが、早期発見の第一歩となります。早く治療を始めるほど、回復も早いといわれていますので、家族や周囲の方に次のようなサインがあることに気づいた時には、早めに相談してください。
幻覚や妄想のサイン
- いつも不安そうで、緊張している
- 悪口をいわれた、いじめを受けたと訴えるが、現実には何も起きていない
- 監視や盗聴を受けていると言うので調べたが、何も見つけられない
- ぶつぶつと独り言を言っている
- にやにや笑うことが多い
- 命令する声が聞こえると言う
その他のサイン
会話や行動の障害
- 話にまとまりがなく、何が言いたいのかわからない・相手の話の内容がつかめない
- 作業のミスが多い
意欲の障害
- 打ち込んできた趣味、楽しみにしていたことに興味を示さなくなった
- 人づきあいを避けて、引きこもるようになった
- 何もせずにゴロゴロしている
- 身なりにまったくかまわなくなり、入浴もしない
感情の障害
- 感情の動きが少なくなる
- 他人の感情や表現についての理解が苦手になる
うつ病
うつ病とは
眠れない、食欲がない、一日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しめないといったことが続いている場合、うつ病の可能性があります。うつ病は、精神的ストレスや身体的ストレスが重なることなど、様々な理由から脳の機能障害が起きている状態です。脳がうまく働いてくれないので、ものの見方が否定的になり、自分がダメな人間だと感じてしまいます。そのため普段なら乗り越えられるストレスも、よりつらく感じられるという、悪循環が起きてきます。
薬による治療とあわせて、認知行動療法も、うつ病に効果が高いことがわかってきています。早めに治療を始めるほど、回復も早いといわれていますので、無理せず早めに相談すること、そしてゆっくり休養をとることが大切です。
うつ病は増えている
日本では、100人に3~7人という割合でこれまでにうつ病を経験した人がいるという調査結果があります。さらに、厚生労働省が3年ごとに行っている患者調査では、うつ病を含む気分障害の患者さんが、近年急速に増えていることが指揮されています。
「うつ病が増えている」の背景には、
- うつ病についての認識が広がって受診する機会が増えている
- 社会・経済的など環境の影響で抑うつ状態になる人が増えている
- うつ病など診断基準の解釈が広がっている
など、様々な理由が考えられています。
うつ病のサイン・症状
それは、どのくらい続いていますか?
うつ病と診断するめやすとして、次のような症状のうちいくつかが2週間以上ずっと続く、というものがあります。ひとつひとつの症状は誰もが感じるような気分ですが、それが一日中ほぼ絶え間なく感じられ、長い期間続くようであれば、もしかしたらうつ病のサインかもしれません。
- 抑うつ気分(憂うつ、気分が重い)
- 何をしても楽しくない、何にも興味がわかない
- 疲れているのに眠れない、一日中ねむい、いつもよりかなり早く目覚める
- イライラして、何かにせき立てられているようで落ち着かない
- 悪いことをしたように感じて自分を責める、自分には価値がないと感じる
- 思考力が落ちる
- 死にたくなる
周りからみてわかるサインもあります
うつ病では、自分が感じる気分の変化だけでなく、周囲からみてわかる変化もあります。周りの人が「いつもと違う」こんな変化に気づいたら、もしかしたら本人はうつ状態で苦しんでいるのかもしれません。
- 表情が暗い
- 涙もろくなった
- 反応が遅い
- 落ち着かない
- 飲酒量が増える
体に出るサインもあります
抑うつ状態に気づく前に、体に変化が現れることもあります
- 食欲がない
- 体がだるい
- 疲れやすい
- 性欲がない
- 頭痛や肩こり
- 胃の不快感や便秘、めまい、口が渇く 等々
双極性障害
双極性障害とは
うつ病だと思いながらも、極端に調子がよくなって活発になる時期がある場合は、双極性障害(躁うつ病)かもしれません。
双極性障害では、ハイテンションで活動的な躁状態と、憂うつで無気力なうつ状態を繰り返します。躁状態になると、眠らなくても活発に活動する、次々にアイデアが浮かぶ、自分が偉大な人間だと感じられる、大きな買い物やギャンブルなどで散財するといったことがみられます。
躁状態ではとても気分がよいので、本人には病気の自覚がありません。そのため、うつ状態では病院に行くのですが、躁のときには治療をうけないことがよくあります。しかし、うつ病だけの治療では双極性障害を悪化させてしまうことがあります。本人だけでなく、周囲の人も、日頃の様子や気分の波を見守り、躁状態に気づくことが大切です。
双極性障害はうつ病ではない
「双極性障害」はかって「躁うつ病」といわれていました。そのこともあってうつ病の一種と誤解されがちでしたが、実はこの二つは異なる病気で、治療も異なります。
本当は双極性障害であるのに軽い躁状態に気づかず、うつ病と診断されている人も少なくありません。うつ病の治療をしてもなかなか治らない患者さんが実は双極性障害だったということはしばしばあります。躁とうつの症状が現れる間隔は数ヶ月だったり数年だったりいろいろです。躁状態から突然うつ状態へと切り替わることもあります。
うつ状態しか経験したことがないと思っていても、病気とは思えないようなごく軽い躁状態を何度も経験していた、ということもあります。
双極性障害で困ること
躁状態の時は現実離れした行動をとりがちで、本人は気分がいいのですが周りの人を傷つけたり、無謀な買い物や計画などを実行してしまいます。
再発しやすい病気なので、こうした躁状態をくりかえすうちに、家庭崩壊や失業、破産などの社会的損失が大きくなっていきます。
また、うつ状態はうつ病と同じように死にたいほどの重苦しい気分におしつぶされそうになりますが、躁状態の時の自分に対する自己嫌悪も加わり、ますますつらい気持ちになってしまいます。
躁状態のサイン
- 睡眠時間が2時間以上少なくても平気になる
- 寝なくても元気で活動を続けられる
- 人の意見に耳を貸さない
- 話し続ける
- 次々にアイデアが出てくるがそれらを組み立てて最後までやり遂げることができない
- 根拠のない自信に満ちあふれる
- 買い物やギャンブルに莫大な金額をつぎ込む
- 初対面の人にやたらと声をかける
- 性的に奔放になる
うつ状態のサイン
うつ病の記事を参照してください。
強迫性障害
強迫性障害とは
強迫性障害では、自分でもつまらないことだとわかっていても、そのことが頭から離れない、わかっていながら何度も同じ確認をくりかえしてしまうことで、日常生活にも影響が出てきます。
意志に反して頭に浮かんでしまって払いのけられない考えを強迫観念、ある行為をしないでいられないことを強迫行為といいます。たとえば、不潔に思えて過剰に手を洗う、戸締りなどを何度も確認せずにはいられないといったことがあります。
こころの病気であることに気づかない人も多いのですが、治療によって改善する病気です。
「しないではいられない」「考えずにいられない」ことで、つらくなっていたり不便を感じるときには、相談してください。
強迫性障害のサイン・症状
不潔恐怖と洗浄
汚れや細菌汚染の恐怖から過剰に手洗い、入浴、洗濯をくりかえす、ドアノブや手すりなど不潔だと感じるものを恐れて、さわれない。
加害行為
誰かに危害を加えたかもしれないという不安がこころを離れず、新聞やテレビに事件・事故として出ていないか確認したり、警察や周囲の人に確認する。
確認行為
戸締まり、ガス栓、電気器具のスイッチを過剰に確認する(何度も確認する、じっと見張る、指さし確認する、手でさわって確認するなど)
儀式行為
自分で決めた手順でものごとを行わないと、恐ろしいことが起きるという不安から、どんなときも同じ方法で仕事や家事をしなくてはならない。
数字へのこだわり
不吉な数字・幸運な数字に、縁起をかつぐというレベルを超えてこだわる。
物の配置、対称性などへのこだわり
物の配置に一定のこだわりがあり、必ずそうなっていないと不安になる。
睡眠障害
睡眠障害とは
睡眠障害とは、睡眠に何らかの問題がある状態をいいます。眠れなくなることはよくみられますが、眠れないことイコール不眠症ではありません。不眠の原因には、環境や生活習慣によるもの、精神的・身体的な病気から来るもの、薬によって引き起こされるものなど、様々です。
さらに、睡眠障害には不眠だけでなく昼間眠くてしかたないという状態や、睡眠中に起きてくる病的な運動や行動、睡眠のリズムが乱れて戻せない状態など、多くの病気が含まれます。
睡眠障害によって、日常生活や社会生活に支障が出てくることがあります。睡眠障害によって日中の眠気やだるさ、集中力低下などが引き起こされると、日々の生活に支障をきたし、極端な場合には事故につながることもあります。
こうしたことから、睡眠障害に適切に対処することが重要と考えられています。
睡眠障害のサイン・症状
睡眠障害のサインや症状は大きく分けて、①不眠、②日中の過剰な眠気、③睡眠中に起こる異常行動や異常知覚・異常運動、④睡眠・覚醒リズムの問題、の4つにまとめられます。また、いびきや寝ぼけなど、周囲の人から指摘される症状もあります。
サインや症状を、自分で困っているものと人から指摘されるものの両面から把握し、疑われる疾患について専門医にきちんと判断してもらってください。
まずは、早めに受診しましょう
以上、こころの病気や障害に伴う症状や特性について、いくつかをご紹介しましたが、この他にも、「解離性障害」「摂食障害」「適応障害」「パーソナリティ障害」「発達障害」「パニック障害・不安障害」「PTSD」「薬物依存症」「てんかん」「性同一性障害」等、多くの疾患があります。
現代ではインターネットや本などで、こころの病気に関しても、いろいろな情報を集めることが出来ます。しかし一方的な情報を集めて自己診断することは、正しい診察を受ける機会を遅らせるだけでお勧めできない方法です。うつ病を例にとると、本当にうつ病なのか、うつ病のどのタイプなのか、などの正確な診断は精神科の専門医が、きちんと診察しないとわからないのです。まずは、早めに受診することが大切です。
※このページの出典は、厚生労働省の「みんなのメンタルヘルス」です。